WACo参画により道の駅での 主観的健康感の向上をめざす

“健康支援型の道の駅”を地元住民の健康拠点に

パシフィックコンサルタンツでは、2017年より千葉県長生郡睦沢町から、「先進予防型まちづくり事業」を受注し、「”人”の健康と”地域”の健康の両輪で、住民が健康になればなるほど町も元気になるまちづくり」を目指した施策を検討・実践してきました。

睦沢町では、施策の柱の一つである「自然に健康になる環境づくり」の具体的な拠点として、「むつざわスマートウエルネスタウン拠点形成事業」により「道の駅 むつざわつどいの郷」（建替え）や町営住宅（新設）等を整備し、2019年10月にオープンしました。パシフィックコンサルタンツは、事業者として道の駅等の整備・運営に取り組んでいます。

最初は当社独自で健康支援へのアプローチを検討していましたが、睦沢町との話し合いを重ねていくなかで「町民の方々の健康状態を継続的にモニタリングし、評価していくことが重要」という話になりました。そこで関連した資料調査を実施したところ、高齢者を対象とした予防医学研究の第一人者である千葉大学予防医学センターの近藤克則教授の存在を知りました。「暮らしているだけで健康になれる町」「ゼロ次予防」といった、近年、国が推進する健康施策の領域で深い知見をお持ちの研究者です。その研究領域が本事業を発展させていくうえで非常に重要なものであると確信しましたので、当社からお願いして、睦沢町にお住まいの方々の健康評価にご協力いただきました。

近藤先生には幾度となく相談に乗っていただき、当社の取り組みを深く理解してくださいました。具体的なアドバイスやアイデアを述べていただく場面がありましたが、その内容はいずれも豊富な実証分析を通じたエビデンスに基づくものであり、次々と新しい視点やブレイクスルーをもたらしてくださいました。

当社の取り組みの一つとして、「むつざわスマートウエルネスタウン」整備の際に、”健康支援型の道の駅”をコンセプトに掲げ、敷地内に農産物直売所やレストラン、温浴施設、交流広場などを設け、観光客など地域外の人々だけではなく、地元の方も集い、交流を深められる場となるようデザインしました。その過程で近藤先生のご助力により、それらひとつひとつの施設や活動のあり方のエビデンスをアドバイスいただき、施設計画の参考とさせていただいていました。

道の駅を通いの場とする住民の健康効果

そのようなご縁もあって当社もWACo参画企業の一員となり、本プロジェクトもWACoの枠組みのなかで推進していく運びとなりました。

近藤先生はじめ千葉大学の先生方には、先進予防まちづくりを実現するためのデータをどうやって取っていくかの検討や分析、評価指標の考え方、それにもとづいたアドバイスなどを担っていただいています。

睦沢町が取り組まれている先進予防型まちづくりでは、町民誰もが、健康を意識せずとも「暮らしているだけで健康になる」ために、「外出」の機会を増やすことを勧め、「健康習慣」を促し、「交流」の機会を増やすことに重点を置いた取り組みを行うことで、「主観的健康感」を向上させることを目指しています。

先進予防型まちづくりで使用している重要な健康指標には、医学的な健康状態ではなく、自らの健康状態を主観的に評価する指標「主観的健康感」というものがあります。これも千葉大学の先生方のアドバイスで導入したものです。

本プロジェクトでは、この「主観的健康感」をテーマに、経年的に町民アンケートデータを取得・検証する取り組みを行っていますが、そこからいくつもの興味深い傾向が浮き彫りになりました。

道の駅を利用している方は、利用していない方より、「主観的健康感が良い・改善した」と回答している方が多いことがわかりました（※1）。

さらに道の駅の近くに住んでいる方ほど「主観的健康感」が改善される方の割合が多いことが明らかになりました。

道の駅の利用を通じて町民の皆さんの外出機会や交流機会が増え、「主観的健康感」の改善に結びつくことがWACoの共同研究によって裏付けられたことは大きな成果です。当社でもWACoというアカデミックなコンソーシアムに参加することで、学術的な視点での調査・分析にもとづくアドバイスをいただけることが参画の大きなメリットと感じています。

WACoは、興味深いテーマに課題感を持って取り組む企業が参画されています。だからこそ、参画企業同士が柔軟かつ積極的に連携を図っていけるためのハブの役割をより強く発揮してほしい、とこれからのWACoに期待します。それによって、参画への意義やそこから生まれる成果はより大きなものとなっていくものと信じています。