CCRC事業の可能性を探る共同研究で健康増進プログラムを実施

リソル総合研究所株式会社

健康寿命延命のまちづくりを産学官で連携

  リソルグループは、房総半島のほぼ中央、「千葉県のおへそ」に位置する長柄町に展開する複合リゾートを運営しています。ここは、100万坪という東京ドーム約70個分の広大な敷地に、分譲住宅、3棟のホテルや天然温泉、レストラン、ゴルフ場、スポーツ施設などが整備されています。都心から車で約75分というアクセスのよさと、自然豊かな環境で文化的な活動をしながら生活できる特長から、人口が減少しつつある長柄町にありながらこの施設にある分譲住宅エリアの人口は増加傾向にあります。

 2012年に、当社はこの場所で高齢者が健康な段階で入居し、生涯持続的なケアを受けながら暮らせる生活共同体 ”Continuing Care Retirement Community (CCRC)”事業が実現可能かどうかを検討していました。というのも、運営をしているスポーツクラブ会員の方々はほぼ60歳以上でして、健康寿命延伸のためのサービスが大きな命題だったのです。

 当時、CCRC事業の海外の実績を調べると、大学と連携した取り組みが主流だったので、当社でも探したところ、千葉大学に地域貢献や地域振興のプロジェクトがあることを知りご相談しました。千葉大学の方でもCCRC事業に非常に興味を持っていただき、国際学術研究院の田島翔太助教や鈴木雅之教授からいろいろアドバイスをいただき、スポーツクラブで60歳以上の方に向けたウェルネスエイジングクラブをスタートさせました。

 そうしたなかで、千葉大学からWACoへのお誘いをいただき、健康寿命延伸のまちづくりという方向性が合致していると考え、参画させていただくことにしました。千葉大学からリソースを得ることが、CCRC事業を進めるうえで重要なポイントになると思ったからです。

 しかも千葉大学は県内の国立総合大学で、多彩な学部があることも大きな魅力でした。園芸学部には、この広大な敷地内のガーデニングや、趣味づくりのプログラムを作るうえで多大なご協力をいただいています。 その後、長柄町に、健康寿命延伸のまちづくりの話をしたところ、定住者が増える取り組みに興味を持っていただき、産学官連携のプロジェクトがスタートしました。

グランピングエリアにあるナーセリーにハーブ苗を用意し宿泊客に提供している

健康推進への個別最適化プログラムが成果をあげる

  2018年から始まったWACoでの取り組みでは、当社が運営するスポーツクラブの会員のなかで健康に非常に興味のある方150名を対象に、千葉大学予防医学センター近藤克則教授に監修いただいた健康推進プログラムを実施しました。健康寿命を延ばすために不可欠な疾病予防、体力低下予防、認知症予防の“3つの予防”を目的に、軽い運動から本格的なスポーツメニューと、好奇心や向上心を刺激する参加型のカルチャープログラムを毎日用意しました。そのほか、千葉大学による生涯学習プログラムや、管理栄養士による栄養相談、バランスよく栄養が摂れ、健康に配慮した食事を提供する食堂で食生活をサポートするなど、一人ひとりの健康状態をチェックしながら、個別に作成した最適プランを約3年間続けていただきました。

 その結果、BMIと腹囲の有意な減少が見られたほか、善玉コレステロールの改善も認められました。また、運動系もしくはカルチャー系プログラムのいずれかを利用した人より、両方のプログラムを積極的に実践した人は、4倍以上も善玉コレステロールが増加したことが判明しました。それだけでなく、ウェルネス会員に入会したことで、「人とのつながりが増えた」「人と話す時間が長くなった」という会員も多く、健康寿命の延伸につながる社会参加の時間が増えるという効果も表れました。このような取り組みが疾病予防、体力低下予防、認知症予防などの健康増進効果につながることが実証され、その内容は日本健康支援学会や論文でも発表※しました。

 こうした一定の成果とその裏付けによって、CCRC事業に大きな拍車がかかるところでしたが、2020年のコロナ禍で事情がガラリと変わりました。密となるスポーツクラブの運営がストップしたため、それまでのCCRC事業は無期延期となり、施設のコンセプトを大幅に変更しリニューアルする必要に迫られました。

 リニューアルする際も、千葉大学やご紹介いただいた企業や人々からもアドバイスをいただきながら実施でき、そうした関係があったからこその部分も多くあります。たとえば、千葉大学からご紹介いただいた電力会社様とは、再生可能エネルギーを作り当社の施設で再利用する試みにおいて連携し、日本初の地産地消エネルギーシステムを現在稼働させています。千葉大学と連携したことで、多様な企業や人々とのネットワークができたことは、大きな財産となりました。

 また、現在分譲住宅エリアに住んでいる100世帯以上の方々に向けて、これまでのデータや知識を活用しながら、日常生活から健康増進に関するサービスの提供を継続しています。元気なシニアをどんどん増やして、活気あるまちづくりをめざす思いは現在も変わりません。

※部署・役職名は取材時のものです