人を幸せにする画期的な習慣化アプリを運用
エーテンラボでは、チャットで励まし合いながら、歩行、体重記録、早起きなど多種の生活行為を習慣化できるアプリを開発・運用しています。
この習慣化アプリ誕生の出発点は、当社代表の長坂が前職であった総合電機メーカーの新規事業部に在籍していた時に「みんなを幸せにしたい」という思いから生まれたアイデアでした。人は自分から積極的に行動すると幸せを感じるということが言われています。ロールプレイングゲームの世界は、人をどんどん行動させて楽しく幸せにするものですが、それを現実世界にも応用したいと思ったのです。
ただし、現実の行動では、第一歩が踏み出しにくく、継続が難しいという課題がありました。そこで考えたのがピアサポート(仲間同士の支え合い)という手法です。人は何かを行った(もしくは行動した)ときに、すぐフィードバックがあるとさらに行動できるという心理があります。同じことに挑戦する仲間がいてチャットで励まし合えれば、新しいことが習慣化できると思い、アプリを開発して2016年に事業化しました。
この習慣化アプリは、ユーザー数が150万人を突破し(2024年6月現在)、過去に「Google Playベストアプリ」を3回受賞しています。また、3年前からはこのアプリを使った、加齢により心と体の機能が低下した状態「フレイル(虚弱)」の予防事業も始めており、これまでに約20の自治体との事業実績があります。
習慣化アプリを導入した自治体からの評判も良く、「やってよかった」という声を多くいただいています。しかしこれまでに、本当に効果があるのかというエビデンスはまだありませんでした。これがないとなかなか全国に広がりません。特にヘルスケア業界ではエビデンスの有無は重要です。
この分野でどのようなエビデンスがあるのか調べていたなかで、千葉大学予防医学センターの近藤克則教授による自治体との研究成果や、同センター中込敦士特任准教授がICT(情報通信技術)に着目して研究されていることを知りました。そんな折に、中込先生が当社のフレイル予防事業の資料をダウンロードされたことを知り、それをきっかけに2022年12月に打ち合わせの機会を設けていただきました。
中込先生は、当社の習慣化アプリがこれまで先生方の提唱してきたことを具現化したものであるように感じて興味を持たれたとのことです。また当時はコロナ禍で通いの場になかなか行きにくかったという状況もあり、このアプリがオンラインで集まって社会参加を継続できる点を高く評価いただいたようです。
先生とお話して、エビデンスのレベルの向上や、全国自治体において社会参加を増やしていく活動が健康増進につながるという研究内容が、当社が目指しているものに近いと感じ、すぐに共同研究のご相談をさせていただきました。
研究計画から先生方の助言を得て、心強くスタート
共同研究では、初期の研究計画から先生方に多くの助言をいただきました。たとえば、習慣化アプリを利用する介入群と、利用しない対照群とを比較する2群に分けたときに、ばらつきがでないよう参加者の条件を揃えるなど、当社だけではとても構想できないアプローチが組まれました。今後は、アプリのデータをお渡しして解析や論文化を進めていただく予定です。
今回の共同研究は、以前からデジタルデバイド解消事業で関係のあった都内の高齢者福祉課や老人クラブ連合会にもご協力いただいた、産学官民連携の研究体制です。さらに、千葉大学から千葉県内の老人クラブをご紹介していただき研究にご協力いただくことになりました。
習慣化アプリの長所は、使っていて楽しいところです。特に独居となったシニアの中には、一日誰ともコミュニケーションしない方もいらっしゃいます。しかし、習慣化アプリのチャットを使えば家に居ながらでも誰かとおしゃべりすることができます。これによって、「今日自分が生きていたという証拠を誰かに示すことができる」「他の人が撮った写真を見て刺激を受けた」などの感想をいただき、多くのシニアに楽しんでもらっています。
研究にご協力いただくシニアの方たちには、この習慣化アプリの使い方について、講習を受けていただきますが、受講された方たちは、毎日誰かから連絡が来ること自体がとてもうれしそうで、スマホを楽しんで使っていると感じます。スマホに苦手意識があるシニアは食わず嫌いなだけで、フォローする環境さえあれば、『スマホってこんなに楽しいものなのね』と言ってもらえます。
将来的には、近藤先生方の知見をお借りして、習慣化アプリを活用した新しいフレイル予防・介護予防事業を全国に普及させる活動を推進していきたいと考えています。たとえば、こうしたアプリを活用する際の社会保障費への効果や、健康アウトカムへの効果を長期的に検証することも必要でしょう。習慣化アプリによってシニアの健康寿命が延びることで、将来的な社会保障費が減るだけでなく、シニアをケアするお子さん世代の就労問題なども解決されたり、シニア自身も健康に仕事を続ける消費者であり続けたりして、事態がどんどんよくなることが期待できます。
今後も、習慣化アプリのフレイル予防事業の効果をより上げるためのプログラムの改善を先生方とご一緒に進めていきたいと思います。
代表取締役
長坂 剛
※部署・役職名は取材時(2024/1/23)のものです
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