WACoを通じ、学術的な観点から 食と健康の新たな知見を導き出していく

株式会社ニップン

食と健康の新たな知見を得るためWACoへ

ニップンは創立以来の製粉事業を核に、加工食品事業や冷凍食品事業、中食事業(外部で調理された物を自宅や職場に持ち帰り食べること)、ヘルスケア事業と、食に関する多角的な事業を展開する企業です。

今後の成長発展をめざすうえで、機能性食品を含めた食品事業の分野で新たな市場の開拓や新規の素材探索が重要であるとの考えのもと、当社の中央研究所内にイノベーションセンターを発足させ、「食と健康」をテーマに機能性表示食品をはじめとした健康に寄与する商品の研究開発を行っています。

そのなかで、以前より「食と栄養」「食と健康」に関して千葉大学 元学長の齋藤 康先生に継続的にアドバイスをいただいており、そのご縁から同大学予防医学センター センター長・教授の森 千里先生、同大学大学院医学研究院教授 横手 幸太郎先生をはじめとした研究者の方々とも接点を持つことができました。

千葉大学予防医学センターは、環境省が2011年から実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」における調査拠点の一つとしての役割も担っています。先生方からその研究プロジェクトをご紹介いただき、当社としても学術的な視点から食と健康に関する知見を得られる貴重な機会だと捉えて、参画させていただきました。

このエコチル調査は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから生後の健康状態を追跡調査するもので、全国15地域、10万組の子どもたちとそのご両親に参加いただいている大規模な取り組みです。

千葉大学の「エコチル調査千葉ユニットセンター」では、質問票調査や血液・尿の採取、住まいにおける環境試料の採取をはじめ、さまざまな調査を実施しています。当社はそのデータを通じて食と栄養・食と健康に関連した知見を導き出す研究を担当し、それぞれの調査要素の関連性を可視化するためにAIを用いたデータ解析などにも取り組んでいます。

また、先生方からOPERAでのケミレスタウン研究についてお話を伺う機会があり、そこで住環境や地域環境など、食と栄養を含めた幅広い視点から人々の健康にアプローチしていくWACoの研究を知ることとなりました。そして「WACoに参加して、より学術的な観点から食と健康への知見を深めてみては」とお誘いいただき、これまで取り組んできた研究も活かせる良い機会だと確信して参画を決めました。

異業種連携から食のイノベーション実現へ

現在当社はWACoの参画企業の一員として、研究開発課題10「コミュニティに実装可能な食を中心とした健康増進プログラムの開発」に取り組んでいます。

ここでは、小児期の健康に寄与する食事や背景因子の探索による健康な将来世代創出のためのプログラムづくりを目的とした研究に関わっていますが、これはまさにエコチル調査や当社の「食と健康」研究の延長線上にあるもので、千葉大学予防医学センターとの連携のもと、従来の研究を展開的に継続して進めています。

WACoに参画することで感じられるメリットは大きく分けて2つあります。

まず1つは千葉大学予防医学センターという医学の研究拠点で研究を行えることです。食品企業である当社には、「食」に関する知見の蓄積はあるものの、医学の分野に深く入り込んで知見を得ることは困難でした。しかしWACo参画により産学官連携で研究を実施できることで、食と健康医学・食と予防医学とを結びつけ、新たなナレッジやノウハウの獲得に繋げやすい状況が生まれました。

2つ目は「他の参画企業と連携を図りやすい環境がある」という点です。WACoは産学官連携によるオープンなコンソーシアムなので、食品関連以外にもさまざまな分野の企業が参画しており、異業種間連携を図りやすいのです。先日は不動産デベロッパーの野村不動産様 との連携に向けた話し合いのなかで、同社のシニア向けレジデンスにお住まいの高齢者の方々に、オリーブの搾り粕から抽出された「マスリン酸」という機能性素材や豆腐の加工技術を応用した新しいタイプの植物性たん白素材をご提供させていただいて、食から健康を体感していただく取組みを共同で進めることになりました。

WACoには食品や不動産以外にも小売系やITなどの企業も参画されているので、将来的にはそうした多様な企業様とも積極的に連携を図り、これまで当社にはなかった技術や知見・視点などを取り込んで、当社の研究と融合させながら食のイノベーションを実現していくなど、新たな成長機会の創出に結びつく展開が生まれていくと信じています。

大越 幸太

※部署・役職名は取材時(2023/6/13)のものです


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