地元の多様なプレイヤーと手を結んで 「健康になれるまちの構築」をめざす

岩渕薬品株式会社

当社の原点である社会課題解決に改めて取り組む

岩渕薬品は2024年に創業110年を迎えた医薬品等の卸売会社です。その歴史を紐解くと、薬がない時代には解熱用の氷を保管するための氷蔵を建てたり、オリジナルで製剤したりと、社会課題解決の姿勢で事業を行ってきました。2014年の100周年、また、現社長就任も重なってそうした企業の原点に立ち戻り、地域のみなさまに必要とされる企業を目指すべく、社会課題を解決する事業を行っていこうという考えで、まちづくり事業に取り組み始めました。

超高齢化社会を迎える日本では、医療費の増大による社会保障費の限界が将来的に予測されています。限られた財源の中で本当に必要な人に医薬品を届けるためには、個々の生活習慣を改善することで、病気にならず薬剤服用者を少しでも減らすことが可能な、0次予防が重要だと考えています。

そうした企業としての方針から、当社は千葉大学学術研究・イノベーション推進機構(IMO)のパートナー企業となり、2023年4月には千葉大学医学予防センターの近藤克則教授と共同研究講座「健康まちづくり共同研究部門」を設立し、その流れでWACoに参加することになりました。また、経済産業省の補助事業『高等教育機関における共同講座創造支援事業費補助金』に採択され「健康まちづくり講座」を開催しました。7月から12月にかけて全15回の講座を行い、同じ目的を持った多くの地元の企業などが参加しました。

また2023年11月からは、千葉県四街道市との3者協定締結による産学官の連携で、自然に健康になれるまちづくりを目指した研究に取り組んでいます。四街道市との連携を進めた理由は、当社の本社所在地であり、普段よりさまざまな取り組みで関係性がつくられていたことや、当地で近藤克則教授が日本老年学的評価研究(JAGES)の研究をされていることなどが挙げられます。

また四街道市長が市民の健康に対して強い想いをお持ちであることから協定がスムーズに進みました。四街道市で良いモデルをつくれば、他の地域への横展開もしやすいだろうと予測しています。

健康まちづくり講座(全15講座)は岩渕薬品、千葉大学にとどまらず多くの企業が参画、延べ130人が参加・聴講

まずは地元で連携し、健康まちづくりモデルを構築

前述の「健康まちづくり講座」の最終講義では、四街道市の事例を挙げて、健康になれるまちづくりのために何が必要かをテーマに、それぞれ参加者から課題改善案の提案をしてもらいました。本研究では、そこから討議された案を具体的に形にすることでどの様な変化が現れるかを検討していきたいと考えています。

健康まちづくりを推進するに当たり重要なポイントとなるのが「社会参加」です。近藤教授の研究でも、社会参加割合が高いと要支援・要介護認定率が低いという関連性が挙げられています。※

そこで本研究では四街道市を5つの地区に分け、それぞれの地区ごとに異なる課題に合わせて、社会参加を増やすため社会的つながりを構築していく様々なアプローチ、アクションを展開していきます。

研究内容の一つ目として具体的に検討しているのが、健康推進アプリを用いたウォーキングイベントです。健康推進アプリ自体は2020年に開発し、健康経営のサポートツールとして千葉県内の企業向けに展開してきました。2021年から年2回開催している「企業対抗ウォーキングイベント」は現在、県内企業25社以上の400名近くが参加するイベントとなっています。

このイベントは企業対抗のウォーキング大会で、平均歩数で順位を競ったり、地域の観光を盛り上げる要素としてフォトコンテストを組み合わせたりするなど、楽しみながら参加できる催しとなっています。また大会毎に健康についてのワンポイント講座として管理栄養士の食事指導、WEB体操教室などを実施した回もあります。直近では、健康課題と環境課題の解決のため、地域で活躍する団体と連携し大規模なゴミ拾いイベントと組み合わせてウォーキング&クリーン活動を実施しました。

健康の大切さは誰もが理解していますが、健康維持のための行動に本気で取り組んでいる人はわずかです。また、難しいのが「継続」で、例えば「日に○歩」と自分で目標を決めるだけではなかなか続きません。しかし観光などの楽しみと組み合わせたり、「世のため人のため」などの目標を別に設定したりするとモチベーションが上がります。ゴミ拾いイベントとの連動はその意味で効果的であったと感じています。

上記は企業向けでしたが、四街道市では地域を限り一般の市民を対象に使用いただきます。現在、WACoの先生方からアドバイスをいただきながら、市民向けアプリとしてブラッシュアップを行っているところです。

WACoとの連携においては、エビデンスの部分を期待しています。例えば、この取り組みによって医療費や介護費が減少するなどの裏付けが得られることが理想です。またWACoがハブとなり、千葉大学に限らず、他の企業や自治体との結び付きができることもメリットです。まずは地域の企業と連携し、地域住民のための健康まちづくりに取り組みたいと考えていますが、将来的には、千葉でつくったモデルを全国に広げていけるのではと構想しています。

今後はWACoの各企業との交流や事例等の情報共有によって、取り組みの可能性がより広がると考えています。そのための情報共有の機会を多く作って頂けることをありがたく感じます。

田中 毅

※部署・役職名は取材時(2024/1/23)のものです


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