より高いレベルのシニアレジデンスを追求すべくWACoへ参加
日建ハウジングシステムは日建グループの一員として、「『暮らし』の仕組みを創る」をテーマに集合住宅施設の建築設計や監理業務を行う会社です。そのテーマのもと50年以上に渡り、企画・調査・研究と商品開発やリニューアルまで幅広いサービスを展開し、マンション、海外住宅、厚生施設、サービスアパートメントをはじめとした多彩な集合住宅施設の設計監理や再生コンサルティングを手掛けています。
近年では、高齢化社会へと加速する日本における社会的課題の取り組みとして、2010年頃からシニアレジデンスの分野にも力を入れています。「施設ではない住まいとしてのシニアレジデンス」「シニアの社会参加の機会をデザイン」「健康を維持できる設計手法の研究など先進的な取り組み」などをサブテーマに、大手デベロッパーおよびオペレーターとの連携のもとに、これまで約40棟のシニアレジデンスを竣工させてきました。
そんな当社ならではの取り組みをさらに高いレベルへと押し上げるべく今回WACoに参画しました。経緯としては、シニアレジデンス設計に関連する研究を調べるなかでWACoの中核メンバーである花里先生の取り組みを知り、たまたま当チームの責任者が先生と同じ千葉大学工学部の同級生であったことがきっかけでした。そのご縁で、2022年に東京大学で開催された「健康な都市デザイン」をテーマとしたシンポジウムに参加して、基調講演を務められた近藤先生やディスカッションに参加された花里先生とお話させていただきました。そこで当社の「シニアレジデンス設計手法」を高く評価していただき、「WACoを通じて、 エビデンスベースの設計ツールの体系化に向けた研究を一緒にやりませんか?」とお誘いを受けて、2022年4月よりWACoに参画することになりました。
これまでの取り組みを体系化し、次のステージへ
当社では、これまで培ってきたシニアレジデンス設計での知見を言語化・可視化したものを「設計ツール」と呼んでいます。それに医学的エビデンスを組み合わせて体系化することがWACoでの研究テーマです。
この設計ツールは過去に当社で実践した設計経験を基にして、「懐かしい空間を持ち込む、記憶とつながる素材を使う」「館内に外の雰囲気を持ち込む」「周辺地域施設との関係をつくる」といった、利用者の健康に益するであろう51の項目を抽出しました。次に各項目に関連した先行研究を千葉大学の先生方に調査頂き、両者で効果の妥当性を検証しました。そして花里先生方からアドバイスをもらい、この設計ツールを「活動分類」「機能分類」「キーコンセプト」「期待される健康効果」の区分でデータベース化し、関係者が利用できる設計ツールとして、ウェブサイトで閲覧できる形式でまとめました。今後は、今回開発した設計ツールを基にした実プロジェクトにおける社会実装に取り組みたいと考えています。
WACoに参画することで、一企業としての取り組みに、学術的な視点が加わり、自分たちの設計活動に対する論理的根拠が得られたことが大きな収穫だと思っています。それによってこれまでの取り組みに強い確信を持つことができ、今後、研究はさらに加速していくことでしょう。
もう一つの収穫は、先生方のサポートによって自分たちの取り組みを体系化できたことです。当社の活動や考えをより広く発信することができ、社会に日建ハウジングシステムの価値を示すことができると感じています。
日本は世界でも類を見ない”超超”高齢化社会を迎えており、その大きな社会課題を乗り越えていくための取り組みは世界的にも注目を浴びています。こうした時代の中、WACoという画期的な産学連携の研究を通じて得られた成果を、「日本ブランド」として世界へ発信していきたい、というのが私たちの思いです。同時に、WACoに参画する他の企業とも積極的に連携を図り、ウェルビーイングの実現へ向け新たな価値創造にも全力で取り組んでいきたいと思っています。
設計部 部長
須﨑 正裕
設計部 アソシエイトアーキテクト
行木 慎一郎
設計部
梅原 きよみ
※部署・役職名は取材時(2024/2/1 )のものです
コメントを残す