「通いの場」運営をデジタルで円滑化し新たなかたちの高齢者介護予防を実現

トーテックアメニティ株式会社

「通いの場」運営における課題解決への取り組み

 トーテックアメニティは、以前より自治体向けの社会資源把握支援サービスや、介護給付適正化事業に向けた総合支援システムを全国250以上の団体・自治体に提供させていただくなど、自治体や福祉分野に向けたサービスを展開してきました。

 とくに介護保険者のサービス運用を円滑化に導くような支援においては確固たる実績があると自負しております。そうした背景もあり、千葉大学予防医学センターの近藤克則教授から「通いの場」を通じた介護予防サービス開発に関するご相談を受けたことが今回のWACo参画につながる経緯となっています。

 近年、運動や趣味活動を介護予防につなげる「通いの場」の創設や運営支援に取り組む自治体が増えているなか、近藤教授は「通いの場の運営効果をデータにもとづいて検証し、そこで見つけた新たな改善点を今後の運営計画につなげていくようなPDCAサイクルを回していくことが重要」と提唱されています。そこで当社では[データ収集]→[収集データにもとづく効果分析]→[分析結果にもとづくレポート作成と自治体へのフィードバック]という、介護予防事業のPDCAサイクルにおけるデータ収集部分の仕組みづくりを手掛けています。

 これは「通いの場を設けたはいいが、PDCAサイクルを回すためにどんなデータをどう集めていけばいいのかわからない」や「限られた職員数のなか、データ収集に割ける余裕がない」といった多くの自治体が感じている課題に対し、これを効率的に行う仕組みを当社で開発のうえ、ご提供させていただいた経緯があります。

 従来の通いの場における参加者データの収集では、主にボランティアの方が「紙」の名簿をもとに参加者の情報を手書きやパンチ入力などアナログな方法で記入していました。そのため、多くの手間や労力が発生してしまい、PDCAサイクルを回す上での大きなスポイル要因となっていました。

 そこで当社では、スマホやタブレットを使って参加証に記された2次元コードを読み取ることで参加実績をデータとして収集する「チェックインサービス」という仕組みを開発。これによってICTに不慣れなボランティアの方でも無理なくデータ収集を行うことができるようになりました。さらに、「高齢者各人が、何月何日、どのような活動を行う通いの場に参加したか」というデータを、リアルタイムで蓄積することが可能となりました。

 さらにここで得られたデータを千葉大学の先生方が利用し効果検証や分析が行われます。その結果にもとづくレポートを当該の自治体へ提供することで、具体的な運営から改善につなげていくという改善サイクルが実現します。

タブレット端末を使った「チェックインサービス」

WACo参画を通じて産学官連携サービスが加速

 こうした取り組みは、来年度(2024年度)から施行される「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」に対する支援にもつながるものです。

 これは国の主導のもと、介護予防と保健事業を一緒に考えて実施する試みであり、保健事業の従事者が介護予防のフィールドにも従事できるようにする新たな高齢者支援への取り組みです。

 この「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」に向け、現在、各自治体で準備を行っています。そこでもPDCAサイクルを回していくための準備が整っていないことが課題となっており、その解決に向け当社のチェックインサービスを用いた効率的な「通いの場」向け評価支援サービスを導入いただくためのプロモーションを、千葉大学予防医学センターの先生方のアドバイスを参考に進めています。このプロモーションはZoomを使って実施しています。昨年2月に開催した「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施セミナー」で、全国364団体、602名の方にご視聴いただくなど非常に大きな反響を呼びました。

 2022年度からは、介護予防事業に積極的に取り組まれている京都府内の町に「通いの場」向け評価支援サービスをご利用いただいています。通いの場運営におけるマンパワー不足という課題解決に大きな効果を発揮したほか、操作も極めてシンプルなのでICTやデジタル機器に不慣れな方であっても簡単に使うことができると好評をいただきました。

 さらにその町以外でも、京都府、奈良県、兵庫県内の市町村をはじめとした自治体が、「通いの場」向け評価支援サービスへの参画を決定してくださいました。現在、協定に向けた準備を進めており、扱うべきデータのピックアップ、データの扱い方などに関しては千葉大学の先生方からアドバイスをいただいています。

 このように千葉大学との産学官連携による「通いの場」支援への取り組みは、WACoへの参画を通じてさらに弾みがついたかたちとなり、非常に大きな手応えを感じています。

 また、WACoは予防医学に基づくアカデミックなコンソーシアムであることから、予防医学や社会保障の領域でさまざまな専門性を持つ研究者の方々と連携させていただく機会が豊富にあり、そこから得られるナレッジやノウハウという点にもおいても非常に大きなものがあると感じています。

 近藤教授はじめ千葉大学の先生方はどなたも積極的に自治体と関わり、現場の方々との関係構築を大切にされていらっしゃるので、これまで当社にはなかった貴重な情報やアドバイスを数多くいただけました。さらに今後は千葉大学をハブとして他の参画企業との連携を行う場面も考えられ、そうした部分にもWACo参画の意義を強く感じています。

ボランティア向けの研修会

※部署・役職名は取材時(2023/6/7)のものです


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