千葉大学では、8月1日に、シンポジウム「WACoコンソーシアムが目指すゼロ次予防に基づく自然に健康になれる環境・まちづくり」を開催しました。
シンポジウムでは、WACoコンソーシアムが取り組んできた研究活動の成果を紹介するとともに、健康の維持・増進に対してどのような社会環境・まちづくりが求められるのか、これからの健康まちづくりについて、産官学それぞれの立場から、ディスカッションを行いました。
当日は、企業、自治体はじめ、教職員、学生と様々、会場へ90名程、オンラインでは300名程にご参加いただきました。
はじめに、本学の中山俊憲学長より「多くの方に千葉大学OPERAの健康まちづくりの研究についてご理解いただき、WACoコンソーシアムの将来への展望について議論していただければと思います。また、西千葉キャンパスでこれから始まるウェルビーイングリサーチパークの整備では、大学としても、千葉大学OPERAの取り組みを最大限支援していくつもりです。」と開会の辞がありました。 | ||
続いて、文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課室長 篠原量紗様、国立研究開発法人科学技術振興機構 イノベーション拠点推進部長 酒井重樹様から来賓のご挨拶を賜りました。
1部:千葉大学OPERAの研究活動 成果報告
千葉大学OPERAにおける、各研究課題の成果を報告しました。
千葉大学OPERAの取り組み
千葉大学予防医学センター長・コンソーシアム領域統括 森 千里
OPERA領域統括の森センター長より、 千葉大学OPERAが目指す社会の姿である環境改善型の予防医学「ゼロ次予防」に基づく、暮らしているだけで健康で活動的になるコミュニティ、WACo(Well Active Community)について説明しました。 |
テーマ1 健康コミュニティのデザイン手法の開発と実践
テーマ2 施設類型に応じた健康空間のハード・ソフト開発
千葉大学予防医学センター 准教授 花里 真道
テーマ1・2の課題代表である花里准教授より、テーマ1では、地域コミュニティを、テーマ2では、生活の中で滞在時間の長い施設種類(オフィス、商業施設、教育施設、高齢者施設)を対象とした健康コミュニティ、健康空間のデザイン手法や、ハード・ソフト開発、実践について報告しました。 |
テーマ3 次世代に向けた健康住宅の開発
千葉大学予防医学センター 准教授 鈴木 規道
テーマ3課題代表である鈴木准教授より、住宅を対象とした、化学物質を最大限に削減させた実証実験住宅の開発および予防・健康増進の実証や、住まい・近隣環境と健康に関する課題抽出などについて報告しました。 |
テーマ4 コミュニティに実装可能な食を中心とした健康増進プログラムの開発
千葉大学予防医学センター 教授 櫻井 健一
テーマ4 課題代表である櫻井教授より、ライフコースの始まりである胎児期から小児期にかけたコホート調査の結果を含め、食を中心とする健康に寄与する健康プログラムについて報告しました。
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テーマ5 健康コミュニティの評価システムの構築
千葉大学予防医学センター 教授 近藤 克則
テーマ5課題代表である近藤教授より、住宅から地域・社会、市町村、国が進めるPFS/SIBまでを対象とし、14社と行なってきたロジックモデル、サービス・商品の介護予防効果の検証について報告しました。 |
2部:WACoコンソーシアム今後の展望
千葉大学予防医学センター 准教授 花里 真道
副領域統括・花里准教授より、WACoコンソーシアムの今後の展望について報告がありました。JSTのOPERA事業の補助が終了する2024年度以降も、WACoの研究や実装をコンソーシアムで推進するために、新体制の検討を進めています。WACoには、生活の様々なフィールドが関わるため、コンソーシアム参加主体がそれぞれの強みを活かし、WACoのひとつひとつのピースを埋めていくことで、コミュニティとしてのWACoを社会に提示しうると考え、多様な参加者が、プレイヤーとなり、プラットフォームを構築することを目指しています。また、西千葉キャンパスで検討されているウェルビーイングリサーチパークの整備など、多様なフィールドで健康まちづくりのデザイン・評価技術の創出と社会実装の推進について展望を述べました。
特別講演「健康を基軸とした「経済発展モデル」と「全世代アプローチ」による
革新的well-being地域共創社会の実現」
弘前大学学長特別補佐/健康未来イノベーション研究機構長・教授 村下 公一
3部:パネルディスカッション 「自然に健康になれる環境づくりへの期待と課題」
司会進行 | 千葉大学予防医学センター 教授 近藤 克則 |
パネリスト | 弘前大学学長特別補佐/健康未来イノベーション研究機構長・教授 村下 公一 |
経済産業省 商務・サービスG ヘルスケア産業課 総括補佐 藤岡 雅美 | |
ジャパンヘルスケア代表取締役医師 岡部 大地 | |
千葉大学予防医学センター 准教授 鈴木 規道 |
「健康日本21(第三次)」に “自然に健康になれる環境づくり”が明記されたことで、ますます健康まちづくりへの社会からの関心は高まると考えられます。パネルディスカッションでは、健康まちづくりに関わる登壇者をお招きし、「自然に健康になれる環境づくりへの期待と課題」について、議論を進めました。
生活動線にいかに健康に良い環境を取り込んでいくかや、エビデンス収集、フィールドとのマッチングなどが課題として挙げられ、少子高齢化の時代において、健康まちづくりを複数の企業と連携して行っていくことへの期待が挙げられました。また、健康まちづくりを推進するコンソーシアムメンバーの多様性や知り合い程度の弱いつながりから、新しいアイデアが生み出されるという弱い紐帯の強みや、対面でのコミュニケーションの重要性、ダイバーシティマネジメントがより良い運営体制に求められるのではないかなど、様々な視点、観点で議論されました。WACoの6年間で蓄えたネットワークや、ノウハウも含めて、WACoコンソーシアムの新体制に向けた展望がまとめられました。
最後に、学術研究・イノベーション推進機構 藤江幸一機構長が、「成果が社会に発信されることによって、より良い社会イノベーションとなるのではないか。西千葉ウェルビーイングリサーチパークの計画へもOPERA事業が研究として発展し、社会実装につながることを期待したい」と閉会の挨拶を述べました。
お忙しい中、たくさんの方にご出席を賜り、心より感謝申し上げます。
今回、議論された視点や内容は、OPERA事業終了後も継続する今後のWACoコンソーシアムの運営・推進に活かしてまいります。引き続きWACo実現に向けた取り組みへのご協力や、コンソーシアムへのご参加をお待ちしております。