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2022.12.16
ニュース

12月1日に、シンポジウム【鷗外が目指した健康まちづくりと千葉大学OPERAの「ゼロ次予防」】を開催しました!

千葉大学OPERAでは、12月1日に、シンポジウム【鷗外が目指した健康まちづくりと千葉大学OPERAの「ゼロ次予防」】を対面・オンラインのハイブリッド形式で開催しました。

 

OPERAは、科学技術振興機構(JST)が実施する6年間の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラムで、千葉大学OPERAは今年度が5年目です。千葉大学OPERAでは、本人が意識的に努力をせずとも暮らしているだけで健康になれる「ゼロ次予防」に立脚し、環境を改善することで、健康で(Well)活動的な(Active)コミュニティ(Community)を実現する健康まちづくりのため、共同研究等を行う複数企業とWACo共創コンソーシアムを創設し、産学で共同研究活動を推進しています。

 

今回のシンポジウムでは、今年没後100年を迎えた森鷗外の公衆衛生に基づいたまちづくりに関して、鷗外のひ孫であり、千葉大学OPERA領域統括を務める森教授の講演と、千葉大学OPERAに関わる研究者と参加企業による「健康まちづくり」の研究開発活動の報告や、ディスカッションを行いました。

 

「森鷗外が目指した予防医学のまちづくり」

千葉大学OPERA領域統括・千葉大学予防医学センター センター長 森 千里 教授

千葉大学OPERA領域統括の森教授は、2007年頃から、予防医学のまちづくりに取り組んできました。今年は、森教授の曾祖父である森鷗外の没後100年であり、今日ではむしろ文学者として知られている鷗外が、本業である医者として、ドイツで学んだ衛生学を日本に根付かせるため、また、予防医学や公衆衛生に基づいたまちづくりの普及のために行った様々な取り組みについて講演しました。

 

 

「千葉大学OPERAの取組」

千葉大学OPERA副領域統括 研究開発課題7・8代表 花里 真道 准教授

千葉大学OPERA副領域統括・花里准教授より、千葉大学OPERAの取り組みについて紹介がありました。

千葉大学OPERAでは、疾患の原因となる生活習慣に影響を及ぼす社会環境を整えることを「ゼロ次予防」と捉えて、生活しているだけで、健康で(Well)活動的(Active)になるコミュニティ(Community)「WACo」を目指しています。「WACo」実現のため、3つのキーテクノロジー「デザイン・実装技術」「データプラットフォーム」「指標開発・評価技術」の開発、5つの研究開発課題の中で、コンソーシアムに参加する23の企業と多角的に進める研究事例の紹介がありました。

 

 

「千葉大学OPERA参加企業から取り組みの報告」

千葉大学OPERAコンソーシアムに参加している企業5社よりWACoでの取り組みについて、ご紹介をいただきました。

 

「「健築」の取り組み」株式会社 竹中工務店 医療福祉・教育本部 小林 純 氏

小林氏より、WACoの取組みでつくられた「健築」のコンセプトを医学分野の研究や、調査結果などのエビデンスをまとめ、空間設計・まちづくりに応用可能なコンセプティングツールに展開し、エビデンスに基づく空間デザイン、いきいきとした生活行動を促すプログラム、それを分析・評価するプロセスについてご紹介いただきました。

 

「積水ハウスのとりくみについて」 株式会社積水ハウス 総合住宅研究所 田中 眞二 氏

田中氏より、エアキス(空気環境配慮仕様)の健康効果を医学的に検証する実験住宅での滞在実験について、シックハウスリスク低減の可能性や、空気環境の満足度、リラックス性などの、主観評価において空気環境配慮の効果を示唆されたことなどをご紹介いただきました。

 

「ヤマハ発動機 グリーンスローモビリティの活動概要ご紹介」

ヤマハ発動機株式会社 技術・研究本部 増井 惇也 氏

増井氏より、ヤマハ発動機で取り組む高齢者の移動課題に対する「グリーンスローモビリティ」(電動カート)と、千葉大学と共同で行う実証実験についてご紹介いただきました。これまでに、利用者の外出頻度やコミュニケーションの増加等の効果が見られているそうです。

 

「イオンモールが取り組む健康増進事例」 

イオンモール株式会社 開発本部 地域サステナビリティ推進室 藤本 愛弓 氏

藤本氏より、イオンモールが目指すヘルス&ウェルネスの事例として、国内全店舗におけるイオンモールウォーキングの推進や、千葉大学予防医学センターとの協働で開発された歩行促進を行うプログラム等、来訪者に日常生活の中で健康への気付きを促す空間デザインについてご紹介いただきました。

 

「MEGURU STATION®の健康効果について事例紹介」

アミタホールディングス株式会社 未来デザイングループ 根来 宏行 氏

根来氏より、アミタホールディングスで開発された、ゴミを循環する資源として回収することをきっかけに、人と資源が集まって互助共助のコミュニティを創る拠点「MEGURU STATION®」と、千葉大学と共同で行うMEGURU STATION®利用者の健康効果を検証した調査結果について、ご紹介いただきました。

 

 

「パネルディスカッション:「ゼロ次予防」の健康まちづくりが拓く可能性と課題」

モデレーター: 研究開発課題10代表 櫻井 健一 教授
パネリスト: 株式会社竹中工務店 医療福祉・教育本部 小林 純 氏
ヤマハ発動機株式会社 技術・研究本部 森田 浩之 氏
アミタホールディングス株式会社 取締役 岡田 健一 氏
領域統括 森 千里 教授
研究開発課題11代表 近藤 克則 教授
研究開発課題 9 代表 鈴木 規道 准教授

 

パネルディスカッションでは、WACoコンソーシアム(産学連携)での共同研究を進める上で、コンソーシアムに期待すること。重要だと考えていることについて、議論を進めました。

コンソーシアムへの期待として、企業側からは、現場での取り組みを定量化し、学術的根拠に基づいて検証されることが、信頼性や、社会実装の上でも大きなポイントであること、また、様々な分野の方との共創によるオープンイノベーション、新規市場分野での実装を開拓する仲間づくりなどが挙げられました。研究者側からは、様々な事業分野で優れた社会価値を提供する複数の企業と組むことで、社会実装やブランディングが進むこと、コンソーシアムという面で、企業が連携して地域介入研究をすることで、新しいサービスをつくる事例が今後増えることや、産学だけではなく、産官学の側面が大事であり、地方自治体で小規模の実証実験をしながら、効果検証や評価をしていくことで、政府が進めようとするPFSを使ったマネタイズ等にもつながるのではないか等の意見が挙げられました。

今後の課題・展望としては、ゼロ次予防の概念が世間的に広く認知されることの重要性や、認証・効果検証をする認証制度の可能性などが挙げられました。

議論の中では、各社共通の課題認識からコラボレーションの可能性も見られ、コンソーシアムの意義を肌で感じることができました。

 

今回のシンポジウムでは、100年以上前に森鷗外が提言した公衆衛生に基づいたまちづくりに始まり、千葉大学OPERAのゼロ次予防に基づくWACoの取組み、さらに多岐にわたる研究開発課題の中から、5社の具体的な事例についてご紹介いただきました。また、パネルディスカッションでは、WACoコンソーシアムについて等活発な議論ができました。ご参加いただいた方々からも、様々な気づきや示唆が得られた等のご意見をいただきました。

今回、議論された視点や内容は、今後の千葉大学OPERAの推進に活用していきます。引き続きWACo実現に向けた取り組みへのご協力や、コンソーシアムへのご参加をお待ちしております。